ADAS/自動運転用センサの世界市場規模は2025年に2兆4千億円に成長

(株)矢野経済研究所は、ADAS/自動運転用キーデバイス・コンポーネントの世界市場の調査を実施し、ADAS/自動運転で搭載されているセンサの市場概況、技術動向、自動車部品メーカの搭載動向を分析した。ここでは、2025年までの世界市場規模をセンサ種類別に予測し、公表している。

1.市場概況
2019年におけるADAS(先進運転支援システム)/自動運転用センサの世界市場規模は、メーカ出荷金額ベースで1兆3,602億円に達しており、2017年から拡大基調が続いている。AEB(自動緊急ブレーキ)の標準搭載が日米欧各国で進んでおり、中国においても急速に搭載車種が増加している。このため、車両の前方を検知するレーダ(77GHzミリ波)やセンシングカメラの出荷数量が拡大しており、2019年におけるレーダの世界市場規模は4,608億円、カメラは8,086億円であった。
2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、世界の新車販売台数が大幅に落ち込むために、日米欧中各国のADAS搭載車両の市場規模も縮小し、特に減少幅が大きいのが欧州、米国で20%以上の落ち込みとなる見込みである。このため、2020年のADAS / 自動運転用センサの世界市場規模は、前年比18.3%減となる1兆1,112億円になると予測する。

2.注目トピック~センシングカメラの高機能・高性能化が進展
車両のフロントに搭載されて、前方を認識するセンシングカメラの高機能・高性能化が次のステージに入っている。2019~2020年にかけての注目されるトピックは「3眼カメラ」「CIS(CMOSイメージセンサ)の高画素化」の2点である。
3眼カメラは、2019年に市場投入された自動化レベル2+車両に採用されており、視野角(FOV)52度の標準カメラに、望遠カメラと広角カメラを1モジュール化したものである。望遠 / 広角カメラを追加することでカメラの検知範囲が格段に広がり、先行車両の加減速やカットイン(割り込み)、道路形状を、早めに認識することでスムースな加減速と自動操舵によるハンズオフを実現している。
※ハンズオフの作動条件に応じては、3眼カメラだけでなく、高精度地図やV2X(Vehicle to X)通信機能が必要である。
一方、CISの高画素化については、1.7MピクセルCISを採用したセンシングカメラの搭載が始まっている。従来の1.3Mピクセルから1.7Mピクセルにすることで、FOV52度から100度に広角化し、交差点におけるAEB(自動緊急ブレーキ)機能を実現している。さらに、2Mピクセルを搭載したステレオカメラの採用も始まり、今後は実現する運転支援機能や、車両セグメント / グレードに応じて、CISの高画素化とカメラタイプの使い分けが加速する見込みである。

3.将来展望
2025年のADAS / 自動運転用センサの世界市場規模は、メーカ出荷金額ベースで2兆4,808億円に成長すると予測する。2020年は新型コロナウイルスの影響を受けて、一時的に市場はマイナス成長となるが、2021年からは回復基調に戻り、2025年に向けてADAS装着率は日米両国が90%、欧州80%、中国で70%を超えるために、ADAS用レーダ、センシングカメラの出荷数量が堅調に推移する見通しである。
また、自動化レベル2+の搭載車両の拡大がセンサの市場規模拡大をけん引する。レベル2+の高速道路限定ハンズオフ(手放し)機能の採用が高級車を中心に始まっており、これから2023年にかけて主要自動車メーカにおいて市場投入が活発化する。 レベル2+ではハンズオフを実現するために、フロントに長距離レーダ、センシングカメラを配置するだけでなく、前後左右に短距離レーダを搭載してフロント/リアの検知範囲を広げている。このため、レベル2+搭載車両の拡大が、短距離レーダの出荷数量を押し上げることになる。2024~2025年にかけては、CMOSプロセスによる短距離レーダのコストダウンが進むために、レベル2+は低速ハンズオフを中心に中級車まで設定車種が拡大する見込みで、2025年におけるレーダの世界市場規模は8,505億円に達すると予測する。
(以上、矢野経済研究所)

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