環境にやさしい新規防汚メカニズムによる「透明な海洋生物付着抑制フィルム」の開発

日東電工株式会社

1. はじめに

日東電工株式会社(弊社ホームページ, https://www.nitto.com/jp/ja/)は、1918年、電気絶縁材料の国産化を実現するという志のもと、東京大崎にて創業した。その後、お客様とともに歩み続け、現在では、グループの基幹技術である粘着技術や塗工技術をベースに、エレクトロニクス業界や、自動車、住宅、インフラ、環境および医療関連などの領域で、様々な製品を提供しグローバルに事業を展開している。
近年海洋資源の開発や環境意識の高まりから、海そのものの調査への関心が高まっている。技術の進歩により、計測機器やデータを処理するソフトウェアは急速に進化し、より精度の高いデータを取ることができるようになった。その一方で過去から現在に至るまで常に海洋生物の付着による問題に悩まされてきた。
本稿では環境にやさしく、かつ生物の付着を抑制し、長期にわたって信頼できるデータを取得可能な海洋生物付着抑制フィルムを紹介する。

2. 海洋生物付着抑制フィルムの開発

弊社が保有する表面制御技術と粘着剤設計技術により、簡単に施工できて、かつ無毒な防汚材料を開発した(図1、図2)。塗料のように溶剤によるダメージが無く、厚み調整や乾燥時間も不要である。また独自の防汚メカニズムにより、殺生成分・忌避成分無しで優れた防汚効果を発揮し、外部機関での評価の結果、クルマエビ、マダイ、藻類に対する急性毒性がないことが証明されている。

図1 海洋生物付着抑制フィルムの概要
図2 フィルムの施工イメージ (Nortek製Signature1000)

防汚試験の一例として、三河湾での防汚試験の結果、および国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)様と共同で実施した試験を紹介する。
三河湾での防汚試験では、リファレンスとしてフィルム無しの塩ビ板と、塩ビ板に弊社フィルムを貼り付けたサンプルを、水深1m、流れがほとんどないエリアに沈めた。リファレンスの塩ビ板では1ヶ月後にはすでに海洋生物の付着が始まり、4ヶ月後には大量のホヤ、その後はフジツボに覆われた。それに対し、弊社のフィルムを貼ったパネルは4ヶ月までほぼ付着がなく、6か月後に多少の藻類の付着が見られるだけであった。9ヶ月後には若干の生物付着が見られた(図3)。ただしフィルムを剥がすことで煩雑な清掃作業をせずに原状回復が可能であることも確認できた(図4)。

図3 三河湾での防汚試験結果
図4 フィルムを剥がして原状回復する様子

JAMSTEC様と共同で実施した試験では、JAMSTEC様所有のトライトンブイの喫水面より下の部分に弊社フィルムを貼り付け、和歌山県沖100kmの場所に設置し、経過を観察した。設置後12ヶ月の時点でエボシガイの付着は非常に少なく、同地点でフィルム無しの条件で5ヶ月設置したものと比較するとその差は歴然であった(図5)。

図5 海洋研究開発機構様による防汚試験実績例

3. ドップラー式流向流速計への適用

音響観測機器に海洋生物が大量に付着すると、データ精度の低下や機器の故障など様々な悪影響が生じる。また、生物付着を取るために力を入れて清掃した際に機器を傷つけ、故障につながることもある。しかし、弊社の海洋生物付着抑制フィルムを貼り付けることで長期にわたり海洋生物の付着を抑制でき、かつ均一な厚みにより音響観測データに影響を与えることなく安心して使用できることがわかった。実際に弊社フィルムを貼った流向流速計と貼っていないものを海中に投入し、流速を測定した。その結果、フィルムの有無による差異はなくフィルムを貼った状態でも計測に影響を与えないことを確認した(図6)。

図6 実海域での流速測定試験

4. 水中カメラへの適用

近年海洋調査において直接画像により海況を確認するため水中カメラを設置するケースが増えてきた。また養殖においても個体の観察や、自動給餌装置に水中カメラを設定する場合が増えてきている。しかしレンズ表面をきれいに保ち、目的の画像を得るには頻繁に清掃する必要があり非常に多くの手間とコストがかかっている。この水中カメラにおいても海洋生物付着抑制フィルムを貼り付けることで長期にわたり海洋生物の付着を抑制でき、かつ高い透明性によりクリアな画像が取得できる。株式会社東京久栄様と実施した試験では水中カメラの防水ケース前面に弊社フィルムを貼り、海中に投入した。その後45日間清掃無しでクリアな画像を撮影することができた。3か月後に引き揚げた際にもフィルム貼り付け箇所に生物付着はほとんど見られず優れた防汚効果を発揮した(図7、図8)。

図7 海洋生物付着抑制フィルムを貼ったときの水中カメラの画像
(協力:株式会社東京久栄様)
図8 東京湾設置3ヶ月後の水中カメラ
(協力:株式会社東京久栄様)

5. 終わりに

近年海洋資源の開発や環境意識の高まりから、海そのものの調査への関心が高まっている。その一方で過去から現在に至るまで常に海洋生物の付着による問題に悩まされてきた。弊社では環境にやさしく、かつ作業される方の手間を省くことができないかという思いから本製品の開発を行ってきた。今後より多くの方々にご使用いただき、海洋産業への貢献を目指していく。



問い合わせ先
日東電工株式会社
トランスポーテーション事業部門
モビリティ機能材料事業部
機能性テープSBU

TEL:050-3815-2435(直通)
E-mail:toshiyuki.miyaji(a)nitto.com
HP URL:https://www.nitto.com/jp/ja/products/surface/maringlide001/