西鉄、中型自動運転バスの実証実験

西日本鉄道(株)および西鉄バス北九州(株)は、10月22日より、北九州エリアにおいて中型自動運転バスの実証実験に取り組む。本事業は、経済産業省・国土交通省の事業を受託した国立研究開発法人産業技術総合研究所より実証事業者に選定され、実施するもの。

当実証実験は、自動運転バスの社会実装に向け、必要な技術や事業環境等を整備することを目的に行われるもので、同社は実証事業者として自動運転バスの運行業務や関係機関との調整、検証項目の立案、試験走行を通じた各種検証等の役割を担う。

近年、同社を含む多くのバス事業者が「バス運転士の不足」と「利用者減少に伴う採算悪化」という課題を抱える中、自動運転バスは、移動手段の確保やバス運転士の省人化、増便や運行時間帯の拡大などバスの利便性向上などに寄与するものと期待されている。同社は、将来的な自動運転バスの社会実装を見据え、本取り組みを通じて自動運転バスの運行に関する知見を蓄積していくという。

本年2月に同エリアで行ったプレ実証実験では、小型の自動運転バスを用い、天候や時間帯などさまざまな環境下における走行安全性や、信号交差点の安全・円滑な走行を目的とする「信号情報提供システム※1」の実用性等について検証を行った。

当実証実験では、産業技術総合研究所が開発した中型サイズの自動運転バスを用いるとともに、自動走行の安全性及び円滑性向上のため、新たに以下の取り組みを行う。
《交差点の安全性》
○運行区間(10.5キロ)のすべての信号(計10か所)に「信号情報提供システム」を導入。10キロを超える全運行区間において信号情報と連携する実証実験としては日本最長距離とのこと。
また、そのうち6箇所にはクラウドを介さず信号機側と車両側で直接通信を行う新たな方式(I2V-P2P)を採用し、信号情報伝達時間の短縮を図る。(公道での実験は日本初)
○見通しが悪い交差点(1か所)に「危険情報提供システム」を導入。カメラ等複数のセンサを活用しAIが画像処理と将来予測を行うことで交差点での接触事故を防止し円滑な自動走行を支援する。(公道での実験は日本初)
《走行の安定性》
○新たに高架道路ができたことによりGPS電波が入りにくくなる区間(約1,280m)に「磁気マーカー※2」を埋設し、車両位置認識精度を向上させ自動走行を支援する。

また、より多くの人に試乗して貰うため、運行日数の拡大と増便、途中停車するバス停の追加を行う。さらに、試乗者だけでなく地域の方など広くアンケート調査を実施し、社会受容性の検証と市民目線での課題の把握を行う。

当実証実験では、マスクの着用や咳エチケットの呼びかけ、消毒、窓を開けての運行などの感染防止策を徹底するという。

西鉄グループでは、今後も持続可能な公共交通ネットワークの構築に向けて、自動運転技術をはじめとする先進技術の導入と事業化に向けた取り組みを行っていくとしている。

※1…交差点信号のサイクル情報を、無線装置を通じて車両に送信するシステム
※2…路面や地中に設置し、磁気センサで感知しながら走行することで自動走行を支援するもの

ニュースリリースサイト(nishitetsu):http://www.nishitetsu.co.jp/release/2020/20_058.pdf