差圧伝送器(2)

島津システムソリューションズ(株)
製造本部技術部
緑川 淳

4.差圧伝送器の構造

差圧伝送器の構造について、当社の半導体ストレインゲージ式差圧伝送器を例に説明する。当社の差圧伝送器の外観および、各部の名称を図5に示す。

図5.差圧伝送器の外観

差圧伝送器は、圧力差を受けて電気信号に変換する受圧部と、この電気信号を出力信号に変換する伝送部により構成される。
受圧部には差圧測定箇所から圧力を導く圧力導入口、圧力を受けるシールダイアフラム、シールダイアフラムの変位を伝える封入液、そして半導体複合センサが配置されている。
受圧部の密閉方式としては、Oリング(オーリング)などのシール方式と、全溶接構造とする方式とがある。全溶接構造は、信頼性が高く真空プロセスにも使用でき、長期間にわたって安定した性能を示す。また、小型、コンパクトな造りとすることができるといった特徴がある。一方、Oリングなどのシール方式は、受圧部の分解が可能で、受圧部ダイアフラム面の目視点検、洗浄作業可能であるといった特徴がある。
検出部となる半導体複合センサは、受圧部ボディ、シールダイアフラムおよび気密封止構造により密閉されている。中には清浄で安定した封入液(シリコーンオイル)が充填されており、汚れなどから保護される構造である。
伝送部は、入力信号を演算処理して4~20mAの電気信号に変換するマイコン回路と出力回路、電源・出力の接続点となる端子部から構成されている。防爆構造かつ耐水構造となっており、増幅部と表示部および端子部との2室に分れている。したがって屋外や爆発性ガス雰囲気中での設置も可能である。表示部は、差圧伝送器単体で測定データを現場で目視したり、各種設定を行ったり、設定内容を確認したりできる。

図5で示した差圧伝送器は、プロセス流体の圧力を直接シールダイアフラムに印加する構造になっている。ところが、プロセス流体が高温、高粘度、腐食性、凝固性の場合、差圧伝送器が損傷したり、正しい測定ができなかったりする。また、離れた2箇所の差圧を測定したい場合がある。このようなときには、図6に示す、ダイアフラムシール形差圧伝送器が使用される。
ダイアフラムシール形差圧伝送器は、ダイアフラムシール部を付けたキャピラリーチューブ(圧力を伝えるための管)を受圧部に取り付けてある。キャピラリーチューブの内部には封入液(シリコーンオイル)を充填している。ダイアフラムシール部で受けたプロセス流体の圧力は、封入液を介して受圧部に伝わる。

図6.ダイアフラムシール形差圧伝送器

5.使用例:差圧式流量計

流体が流れる配管内に、流れを絞る構造物(絞り機構)を配置すると、絞り機構の前後の流体には圧力差が生じる。この圧力差(差圧)を測定することで、流量を求めることができる。差圧式流量計は流量計の中でも歴史が古く、現在でも様々な場所で使用されている。絞り機構には、オリフィス、ベンチュリ、フローノズル、ピトー菅などがある。
図7にオリフィスを使用した差圧式流量計の使用例、図8にオリフィスの外観を示す。

図7. 差圧式流量計
図8. オリフィスの外観および配管との関係

差圧式流量計は差圧を作り出す絞り機構と差圧伝送器で構成される。配管内を流れる流量と、絞り機構の上流側と下流側に生じた差圧との関係は、ベルヌーイの式から導くことができる。ベルヌーイの式を基本に展開して 流量計算式を求めると、下記の式になる。

Q=C(ΔP/ρ)1/2
 Q :体積流量
 ΔP:差圧
 ρ :測定流体の密度
 C :定数

この式によれば、流量Qは、絞り機構の差圧ΔPの平方根に比例する。定数Cは、絞り直径比、レイノルズ数、絞りの形状、圧力取出し口の位置など多くのパラメータによって決まる。

6.使用例:圧力式レベル計

差圧伝送器を使用した圧力式レベル計は、タンクや圧力容器のレベル計測に使用されている。タンク側面から圧力を取出し、その圧力から液面を算出するため、省スペースで、設置や保守が容易であるなどの特長を持っている。
タンク内の基準面(差圧伝送器を取り付けた位置)の圧力は、液面までの距離に比例して変化するため、液面の圧力との差圧からタンクのレベルを求めることができる。ここで、大気に開放されたタンクの場合、液面の圧力は大気圧となる。密閉されたタンクの場合、液面の圧力はタンクの内圧になるため、キャピラリーチューブで受圧部を延長したダイアフラムシール形差圧伝送器を使用する。

H=ΔP/(ρ・g)
 H :基準面からのレベル
 ΔP:差圧(基準面圧力-大気圧、あるいは基準面圧力-内圧)
 ρ :密度
 g :重力加速度

図9. 圧力式レベル計測の例

7.おわりに

本稿では、差圧伝送器についてその原理、構造、使用例を紹介した。差圧伝送器の歴史は古く、1940年代より始まる工業用プロセス計測器の発展と共に存在したとも言われる。流量やレベルを計測することで流体の制御を行い、プラントの自動化を可能としてきた。過酷な環境下で様々な流体の測定を求められ続け、現在もなお進化を重ねる差圧伝送器が、これからも誕生するであろう様々なセンサの手本になることと考える。



【著者紹介】
緑川 淳(みどりかわ じゅん)
島津システムソリューションズ株式会社
製造本部技術部

■略歴
2012年 島津システムソリューションズ株式会社へ入社
同社 技術部にて電気化学を応用した廃水、排ガスの浄化装置の開発業務に従事。
2015年 電磁流量計、伝送器。その他工業用計測器の開発業務に従事し現在に至る。