光センサーの基礎と今後の応用展開(3)

NPO日本フォトニクス協議会理事 公益社団法人応用物理学会微小光学研究会事務局長
小椋行夫

4.光センサーの原理 4 4)

4-1 光源の点灯方法

多くの光センサーの光源はパルス変調して使用している。これは外部からのノイズ光と区別するために必要な技術である。このことにより長距離の検出にも向いている。干渉光や外乱光に応じて、投光の周期が変化する相互干渉防止機能付きのタイプもある。
パルス変調をせず直流光を投光するタイプは一定の光量を連続して投射するタイプである。外乱光の影響を受けやすく検出距離が短い欠点があるが高速応答が可能なのでマークセンサー等に用いられている。

図1 パルス光源と直流光源

4-2 三角測距の原理

表2の光センサーの分類2(検出方式による分類)にある距離設定型は三角測距による光センサーである。多くの距離設定型光センサーはこの三角測距が検出原理となっている。投光部から投射された光は被検出物体上で乱反射(拡散反射)する。反射光は位置検出素子にあるレンズで集光され検出素子に入射する。反射光は披検物体の距離によって検出素子上で位置がずれるのでこのずれを測ることにより検出物体までの距離が測れる。これはフイルムカメラのオートフォーカスによく使われていた方式と同じである。

4-3 フォトダイオードの動作原理 2)、4)

フォトダイオードなどの半導体には、N型半導体とP型半導体との2種類ある。このN型半導体とP型の半導体を張り合わせて光を当てると、N型とP型それぞれに+と-の電荷が発生する。光センサーはこの原理を応用しており照射光量に応じて逆電流が流れる。
表1の光センサーの分類1(原理による分類)で記したように光センサーの動作原理には内部光電効果を利用したものと外部光電効果を利用したものがある。

A.外部光電効果による光センサー
・光起電力効果を利用したもの
最も一般的な光センサーで光が当たると電力が発生する。太陽電池に使われている。4)

・光電効果を利用した光センサー
半導体や絶縁体に光があたると電気を伝える電子が増えることを利用しており、最近はこのタイプが多い。Cdsセルなどがある。

B.外部光電効果を利用した光センサー
・光電子増倍管(PMT、フォトマル)
光を当てると光電陰極から電子が飛び出し、ダイノードで増幅される。岐阜県飛騨市神岡町にあるノーベル賞受賞に寄与したことでも有名な、世界最大の地下ニュートリノ観測装置スーパーカミオカンデのセンサーも光電子増倍管である。

・光電管
高真空のガラス容器中に、光電陰極と陽極を設けた構造で、光電陰極(-)と陽極(+)間に電圧を与え、光電陰極に光を入射すると陽極から信号電流がでる。フォトレジスタに似た挙動を示す。

4-4 PN接合半導体の原理

図2 PN接合

以下にはコーデンシ株式会社の技術解説書「光センサーゼミナール」(ウェブサイト版、http://www.kodenshi.co.jp/seminar/)を引用してPN接合半導体の原理を説明する。2)
図2にPN接合半導体の模式図を示す。フォトダイオードに光が照射されると光起電力効果により起電力が発生する。PN接合型の場合熱平衡状態でのフェルミ順位は、P層とN層で同レベルであり内部に電位障壁が生じる。大きな光エネルギー(E=hv)が照射されると、電子は伝導体に引き上げられ、電子と後に残る正孔が対となって形成される。この電子正孔対が空乏層中で形成された場合は、直ちにその電界によって加速され、電子はN層へ、正孔はP層へ移動する。P層N層で発生した場合は、P層の電子、N層の正孔は拡散し空乏層にたどりついたものは、更に電界によって加速され、各々、N層、P層へ入り電荷が蓄積れる(図3)。2)

図3 PN接合のエネルギーバンド

熱平衡状態より過剰の電子数正孔数となりP層、N層が開放状態(OPEN)となっていればP層、N層のフェルミ準位の差が、開放電圧という形で測定できる(図4)。また短絡状態(SHORT)となっていれば、外部回路に流出、短絡電流という形で測定できる。(図5)。電気エネルギーを取り出すには外部負荷を端子間に接続する。

図4 解放電圧 (OPEN)
図5 短絡電圧 (SGORT)

4-5 PN接合型半導体の主な特性

① I-V特性(電流-電圧特性)

図6 I-V曲線

半導体デバイスにおいて、印加した電圧(V)とそれに伴って流れる電流(I)の関係式は極めて重要でI-V特性(I-V曲線)と呼ばれる。横軸が電圧、縦軸が電流のグラフで視覚的に表示される(図6)。

フォトダイオードに光が照射されると、光の強さに従ってI-V特性が下に移動する。この時、端子間を開放しておくと、電圧が生じ、短絡すると逆方向に電流が入射光量に比例して流れる。I-V特性曲線のIとVの積が出力であるため、太陽電池では光利用効率評価においても重要な曲線である。5)

② 分光感度
光センサーに使われる受光素子の多くはシリコンを基板としているので、可視光領域から近赤外に至るまで広い分光感度を持っている。このため多くの光源を使用することができる。用途によっては光学的フィルターを設置して必要な波長域だけを使用することもできる。また可視光領域のみに感度を有する受光素子や赤外光のみに感度を有する受光素子もある。

③ 応答特性
応答速度は速い方が望まれる。応答速度は外部負荷抵抗と内部直列抵抗、P層N層の接合容量の時定数でほぼ決る。一般に受光面積を小さくして逆バイアスを印加する。応答速度を速めるには負荷抵抗を小さくする。PN接合の間にI型半導体(Intrinsic Layer)を挟み込んだPIN型シリコンフォトダイオードは高速光検出に向いている。

④ 暗電流
暗電流とは受光素子に光を照射しない時に流れる電流のことである。光量の少ない被検物体を検知する場合には暗電流を小さく抑える必要がある。暗電流は逆バイアスと周囲温度の上昇に比例して増加するという傾向もあるため光量が少ない領域においては極力逆バイアスの印加を避けて感度のリニアリティーを良くすることが重要である。

参考文献

2) 光センサーゼミナール、コーデンシ株式会社(ウェブサイト版、http://www.kodenshi.co.jp/seminar/

4) 光電センサー技術解説 オムロン技術資料(https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/43/2/

5) 太陽電池 谷辰夫編 パワー社(2008)

次週に続く—