光センサーの基礎と今後の応用展開(1)

NPO日本フォトニクス協議会理事 公益社団法人応用物理学会微小光学研究会事務局長
小椋行夫

Ⅰ.光センサーの基礎知識 ―特徴・種類・原理・応用―

1.はじめに

光センサー(Photosensor)は半導体素子であり、光を電気エネルギ(電流)に変換して検知するセンサーで受光素子ともいわれる光検出器(Photodetector)である。受光素子と記したが実際には、光を投射する投光部と光を受光する受光部から構成される装置が主であり、反射光(または透過光)の光強度を検出して情報を認識する装置である。
光センサーが感知する波長は赤外光から可視光および紫外光までのタイプがあり、日常生活の中にいたるところで使用されている。身近なところではテレビやオーディオ機器の赤外線リモコン、エアコンのスイッチ、最近では屋内居室の天井に設置したLED照明灯も光センサーのスイッチを搭載している。屋外の侵入警戒装置も光センサーである。気が付かないようなところでは歯科の診察台にある口腔すすぎ用コップの給水も光センサーが稼働しており、コップを置くとコップに水が注入され、コップを取ると口すすぎと判断して流し台に洗浄用の水が流れるようになっている。公共のトイレの洗面台の給水にも光センサーが装備されていて手を出すと水が出るようになっているのは周知のとおりである。また光通信関連や産業機械、カメラのオートフォーカスにも使われている。1)

このように光センサーは身の回りのあらゆるところに設置され使われている。これをすべて解説はすることは本稿の趣旨ではない。ここでは光センサーの種類、原理、応用について簡単に解説する。

2.光センサーの特徴

2-1 光センサーの特徴

光センサーには次のような使いやすくすぐれた特徴がある。そのためあらゆるところに応用されており、現代生活では欠かせない装置となっている。

①短い応答時間
センサーの回路はすべて電子部品で構成されているので、機械的な動作時間を含まない。このため応答時間が非常に短い。

②非接触で検出が可能
光を受光しているので機械的に検出物に接触することがない。このためセンサーに機械的損傷を与えることがないためセンサーのMTBF(Mean Time Between Failure:平均故障間隔)が長い。同様に測定対象にもダメージを与えない。

③高分解能
投光、受光光学系の高度な設計技術により、ビーム径を小さくできるので高分解能が可能である。加えて高度な装置設計技術により高精度位置検出、微小物体の検出が可能である。

④色の判別ができる
投光した波長の種類と検出物体の反射強度を比較することにより、色の検出が可能である。また複数の受光素子に色フィルターを設置することにより色の識別を識別することも可能である。

⑤検出距離が長い
光源としてレーザー光などのビームを投射することにより、長距離の物体検出が可能である。超音波や磁気によるセンサーに比べてはるかに長距離検出ができる。

⑥調整が簡単
投射光に可視光を用いる場合には投光ビームが目視できるので、検出物体および受光素子に対する位置調整が容易である。

⑦検出物体に対する制約が少ない
例えば近接センサーなどは検出物体が金属に限定されるが、一般に光センサーは検出物体の反射光あるいは透過光を検出しているので固体(金属、ガラス・プラスチック・木材)および液体などほとんどの物体を検出できる。

2-2 フォトダイオードの特徴 2)

前述の光センサーの特徴は主に受発光素子であるフォトダイオードの特徴によるものである。フォトダイオードは光起電力効果を利用した素子で以下のような特徴がある。

①プレーナ構造であるためダイオード特性が良く、負荷をかけた時の動特が優れている。
②低照度から高照度までの光電流直線性が良い。
③応答速度が速い。
④分光感度波長領域が広い。

参考文献

1) 光センサ・テクノロジー集成、オプトロニクス社 (1990年)

2) 光センサーゼミナール、コーデンシ株式会社(ウェブサイト版、http://www.kodenshi.co.jp/seminar/

次週に続く—