LPWA(Low Power Wide Area)が繋ぐセンシングネットワーク(3)

三田 典玄(本誌企画運営委員)

●各国のLPWAの現状

韓国:
韓国ではSKテレコム社が韓国のほぼ全域でのLoRaWANの電波が届く。このインフラの上に、中小のサービス業者が様々なビジネスを発表している。一例として「Spacosa社」が、「Pger」というLoRaを使ったシステムを発表しており、間もなくサービスを全国展開する。小さなGPSつきのキーホルダーにLoRaの通信モジュールが組み込まれており、キーホルダーを持つ子供やお年寄りなどの迷子などの探索を行う。

中国:
中国IT市場の著名なレポートによれば、中国の機器間(M2M/IoT)市場は2020年までに10億のデバイスをつなぐことになり、そのほとんどがLPWAになる、とレポートしている。中国では、スマートフォンで有名なHuawei社のNB-IoT、土木やプラントなどの重工業系で使われるという「RPMA」など、日本で普及し始めているLoRaとは違う形式のものが多く使われる予想もある。

米国:
米国では、各種のLPWAがサービスとして提供され、百花繚乱の様相を見せており、現状ではどの規格が優位か、という「業界地図」が見えないほどである。なお、LoRaを使い、KDDIの資本を入れたSORACOMが米国展開を発表している。

東南アジア諸国:
東南アジア諸国(タイ、マレーシア、ベトナム、シンガポール、他)もLPWAは注目されているが、まだ決まった規格が優勢、ということはなく、各規格がしのぎを削っている、というのが現状だ。

●将来のLPWA

LPWAは現在、インターネットを基幹として、その「ラストワンマイル」の低速通信を補うもの、という位置付けの商品やサービスが多く、実際、LoRaなどの規格はそれを前提としている。しかしながら、災害などの利用という面では、基幹システムであるインターネット網そのものが被災地では使えなくなる、ということを考えれば、「ラストワンマイル」ではなく、むしろ災害時においては、低速ながら情報のやり取りができる、という非常時の基幹システムでの利用が促進されることが望ましいだろう。また、現在、日本でLPWAを商品ラインとしている業者は数多く出てきたものの、自社でチップやプロトコルまで考案し作れる業者は限られており、これらの基礎的な部品を作れる業者の育成も、日本の産業を考える上では課題であると言える。LPWAの市場はこれから大きくなる、という観測がどの国でも見られるが、これまでにあるWi-Fiなどの無線システムや既に基礎的な敷設が終了していると言われている携帯電話網(3G/4G/5G)との差別化において、特にコストや低消費電力などの面で大きなアドバンテージが出せるアプリケーションを用意できるかどうか?ということが、大きなLPWAの今後の普及に影響するファクターとなるだろう。