LPWA(Low Power Wide Area)が繋ぐセンシングネットワーク(2)

三田 典玄(本誌企画運営委員)

●防災以外のLPWAシステム応用

LPWAはその性質上、消費電力を低くすることに力がはいった設計がされており、長時間のオペレーションが可能である。そのため、センサーをつけた端末としてバッジなどの小さな形もできるうえ、価格も安く、通信料金もかからないので、介護施設などでの被介護者の管理などにも、一定の効果が期待できる製品をかんがえうる。微弱な振動を取るセンサーや、GPSなどのセンサーをLPWAのついたハードウエアと組み合わせれば、被介護者の施設内外の徘徊などのトラブルや、身体的なトラブルの有無なども遠隔でわかることになり、介護者の負担を減らすことにも資することができる。従来の無線システムでは、無線の飛距離が短かかったり、あるいは、無線の消費電力が多く電池が持たなかったり、価格が高いために導入が不可能、ということもあった。しかし、LPWAでは、これらの問題を大幅に低減できる、と、期待されている。

その他、LPWAの応用としては、GPS(Global Positioning System)を組み合わせ、運送や倉庫などの物流、マラソンランナーなどの位置情報のリアルタイム取得、バスなどの運行情報システムなどの利用に大きな期待がかけられている。

●広域型LPWA

LPWAは、特に防災などのシステムではインターネットを介さない独立したものが主流になると考えられているが、それでも更に地域を超えた広域での通信を得るために、日本ではソフトバンクなどが推進しているNB-IoT(Narrow Band IoT)などが注目されている。NB-IoTは、これまでの携帯電話網(スマートフォンなど)の帯域の一部を使い、従来の携帯電話網のパーツやインフラを使いながら、既存の携帯電話網には負担をかけない帯域のみを使うことにより、インフラを新たに作るなどの新規投資を極限まで低くし、導入しやすくしたものだ。これらの携帯電話キャリアは、現時点では自分たちの持つ携帯電話網をIoTのラストワンマイルと位置付け、サービスを構築している。

NTTdocomoでは、「docoですcar」など、いくつかの法人向けIoTサービスを展開している。また、auは「KDDI IoTコネクト LPWA (LTE-M)」を展開。いずれのサービスも、従来の携帯電話網をベースにすることにより、インターネットではないベースを持ち、全国展開できるのが特徴だ。なお、非キャリア系であるSenseway社は、キャリアの持つLTE網ではなく、インターネット網をベースとしている。いずれも、利用料金は月額数十円ほど、と非常に低く、加えて末端の機器なども非常に安価に構築できるのが特徴だ。


●LPWAの概要

現在使うことができるLPWAはほとんどがサービスとして提供されており、機器組み込みの裸のモジュールがIoTのセンサーなどをつなげるように端子が出ている。また、電波が届きにくいところでは、「ゲートウエイ」という無線LANのアクセスポイントのような機器が提供されており、通常はインターネットに優先や無線のLANで接続し、インターネット上にあるLPWAのアクセスサービスのサーバーにつなげるようにできている。

また、中にはこのような「広域サービス」を持たず、LPWAの範疇での数kmの通信ができる、という独立したモジュールも発売されており、こういったモジュールの通信範囲外での通信は、別に中継局を作って、それを経由したアクセスができる、というものもある。現在は、統一した相互の通信規格がない状態なので、規格が違うと、お互いに通信はできない。